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労働条件「『年次有給休暇を全消化して辞める!』を認めるべきか?」(No.310)2020.10.16

労働条件「『年次有給休暇を全消化して辞める!』を認めるべきか?」(No.310)2020.10.16

 

皆様こんにちは!
社会保険労務士法人「ことのは」
社会保険労務士の豊田恵理と申します。
初めてブログ記事を書かせていただきます。


  • 会社を辞めるにあたり年次有給休暇全て消化したい
  • 会社は認めるべき?
  • 労働者はいつ言うべき?
  • 年次有給休暇の買い取りは原則禁止、義務でもない!

せっかく付与された年次有給休暇、労働者の権利、会社を辞める場合には全て消化したいというのが労働者の心理でしょう。しかしながら、ルールに従い申し出をしないと「立つ鳥後を濁す」ことになります。

会社を辞めると伝えた翌日から休むとなると、、、

  • 後任の引継ぎ?しかし、全消化するためには仕方なし。
  • 労使共に譲らず平行線、時間だけが悪戯に過ぎ、退職日を迎える。

そこで大事になってくるのが「就業規則」です。

  • 何日前に申し出ることになっているか?

就業規則」の年次有給休暇に関する条文には、「何日前までに取得の申出をするのか」が、定められているはずです。通常ですと、数日~2週間前程度の範囲で記載されていることが多いです。この規定に則った申出ならば、たとえ1ヶ月間の休みだとしても、原則、会社側は認めざるを得ません。

しかし、「1ヶ月後に辞めると伝えた翌日から休む」などの場合、「就業規則」のルールから逸脱する可能性が高く、会社は黙って見過ごすわけにはいきません。

その場合は、ルールで決められた日までは通常通り働いてもらい、それ以降の労働日について年次有給休暇を消化してもらうことを、交渉してみましょう。また、後任の引継ぎは完了させる必要があるため、引継ぎにどの程度時間がかかるのかも踏まえて、日程調整することをおススメいたします。

  • 就業規則のルールを説明する。
  • 後任引継ぎが完了する日数・時間を考慮する。

年次有給休暇の取得、就業規則に記載はある。しかし、その運用はケースバイケースとなっている。。。心当たりのある会社は、ルール見直しを実施、社内徹底することをおススメいたします。

さて、上記「何日前までに・・・」は、労働基準法に条文規定はありません。ただし、労働基準法第39条5項には使用者の時季変更権という記載があります(労働基準法第39条第5項)。その条文によると、

  • 5(中略)……請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

とあります。退職を伝えた翌日から休むとなると、その人の担当箇所(仕事)に穴が開くことを意味します。「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当する可能性が高いです。そうなると、やはり年次有給休暇の取得時季をずらしてもらう必要があります。

  • 年次有給休暇の買い取りは原則禁止、義務でもない!

「最終日まで働くから年次有給休暇を買取りしてよ!」という労働者がいらっしゃいます。原則、年次有給休暇の買取りは、法律で禁じられています。しかし、労働者の権利施行が難しい退職日時点における未消化分を買い取るケースは、労基法違反にはなりません。退職後の消化(権利の施行)は不可能であるためです。

ただし、年次有給休暇買取り会社側としては義務ではありません。一方、年次有給休暇買取りが就業規則等で制度化されているならば、ルールに従う必要があります。また、前例がある場合などは、認めざるを得ないケースもあるでしょう(※よって、前例を作りたくない)。

以上、会社側も「就業規則に書いてあるから」「義務ではないから」と突っぱねるのではなく、事情を踏まえた対応をする。労働者側も「どうせ辞める会社、立つ鳥後を濁す」ではなく、引継ぎなどやるべきことを行う。労使双方、円満退職となる努力を心掛けていただければと思います。

まとめ

  • 就業規則の「〇日前までの申出」が原則適用される。
  • 最終的には労使話し合い(交渉)で決める。

これらを軸に、お互いが納得できるような答えを出せるといいですね。

社会保険労務士 豊田恵理



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